第36計:走為上計(逃げるにしかず)
36計の中で、なぜか一番知られている「36計逃げるにしかず」(走為上計)ですが、「走」は中国語では「逃げる」という意味です。
ですから「走為上」は「逃げるを以て上策とする」という意味になり、これが「36計逃げるにしかず」という日本での言われ方になったわけです。
「逃げる」は積極策、負けて逃げるのとは全く違う!
36計でいう「逃げる」というのは、「敗走」とは全く違います。
今、目の前の戦力を敵と味方で冷静に比較した場合「どんな策を使っても勝てない」、或いは「戦った場合の被害が大きすぎる」とみたらこの場は逃げておいて、戦力を再び整え「少ない被害で勝てる状況を作って戦おう」というのが、この「逃げるにしかず」なのです。
「逃げるのはどんな時でも恥だ」などという精神論で玉砕するのではない、超現実主義なんですね。
日本人の美意識とかけ離れた36計
「逃げるのが良い作戦」だ、などという言い方があまりに日本人の意識とかけ離れているので、36計の中でこれだけがやけに有名になったのでしょう。
「逃げる」というのは、日本人の美意識に思いっきり反する行為とみられます。目の前の出来事だけみればそう見えます。でも、人生の戦いは長期戦で見ないと勝てません。
その場の行動はみっともなくみえても、長期的にみて勝ちにつながるなら、最後の勝利は現実的戦略である「逃げる」をとった方がものにします。
世界の中で、この戦略が中々とれない日本人の弱点として敵はついてきます。それを弱点としてわきまえ、最後の勝ちをとる戦略をとるべきです。
ビジネスでも勝つ可能性が低い戦いは避けるのも「走為上計」
「逃げることも良い作戦の一つ」というのは、ビジネスの世界でも使われます。
もちろんビジネスに資金を投入するときは、万全の調査をして、いけるとなったらゴーするのが当たり前です。しかし、いくら調べたといっても、何が起こるか分からないのがビジネスの世界!
一部でも資金を投入した後でも、非常にまずい状況に変わり、このまま進めれば大きな痛手を被ることが確実というような事態になることもまれではありません。
資金を一部でも投入した後では、冷静になれといわれても非常に難しいのですが、そんな時でも冷静に状況を見渡し、もし続ければ全滅という悲惨な状況になるのが確実なら「損失を最小限にする」という判断も、策のひとつとして頭にいれておくべきでしょう。
走以上の計は、こんな状況でも思い出すべき計なのです。
一部負けても全滅よりは遥かにましで、どこかに逃げ隠れて再起を目指すべきときもあるのです。走以上の計は、袋小路にはまり込んだときにも、再起の道を残す策を授けてくれるのです。