第1計 天子をも瞞いて海を渡る計

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瞞天過海計

野村宏

瞞天過海計は36計の最初の計です。

瞞天とは天子を欺瞞(だます)すること、過海とは海を渡ることです。最初の第1計として取り上げられるだけあって、相手をだますパワーが強烈な計です。天子(皇帝のこと)でさえだまされてしまうんですから。

具体的には、こんなやり方が瞞天過海計です。

一段階

大きな川(中国の長江のことなので、日本の川とはスケールが違い、海峡のような感じ)を挟んだ敵の領地に向かって、軍船を出して演習をするのを毎日ずっと長い間やり続ける。

二段階

敵の方の皇帝が、最初は、いつか本気で攻めてくるんではないか、と警戒している。

三段階

しかし、長い間ずっと演習が繰り返されると、皇帝も、どうせ本気では攻めてこないと、いつか油断が生じる。

四段階

相手は、この敵が油断するタイミングをずっと狙っていて、すっかり油断したと判断した瞬間に本当に攻めてくる。

こんな感じで、時間をかけ、攻めるときは一気に敵をほうむってしまう計です。

バクチや相場の世界で結構使われる戦略

野村宏

瞞天過海計は、バクチや相場の世界で結構使われますね。

プロのバクチ打ちがしろうとをカモにするときによく使われます。

最初、何度かしろうとに勝たせ、ビギナーズラックとかいっておだてておいて、あるとき一気に掛け金を上げ、それまでの勝分まで全部取り上げるようなやり方がよく聞きます。

最初に何回か経験させて油断を誘い、一気にやっつける、というやり方は一種の瞞天過海計でしょう。相場でも結構使われるようです。最初は小さく何回か勝たせて、ある時一気に大きく張らせてやっつけるというやり方です。

ビジネスの世界でもこの「瞞天過海計」は要注意!

野村宏

特に中華系の相手と取引するときは要注意です。

最初は何回も、信用できる思わせる行動を積み重ねておいて、あるとき一気に大きな利益を独り占めにしてもっていく、というのがこれです。

たとえば、最初は小さな取引を繰り返し、支払いもきちっきちっとしておいて、信用させておいて、あるとき大きな発注をして、いきなりドロンする、というやり方ですね。

そういう意味で、なんともいやな計略ですが、世界を相手にするビジネスでは、相手がこんな計略を腹に秘めているかなども見極めないとあぶないんですね。

結構時間をかけて仕掛けられるハメ手なので、結構長い間気を抜いてはダメなんです。なんといっても、中国で何千年も使われてきた36計のいの一番に勧められている計略なんですから。

皇帝でもだまされてしまう、一番危なくて、一番有効な計略と評価されているのでしょう。

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