草むらを打って蛇を驚かせ居場所を確認する計とは?三国時代の成功例から学ぶ戦略の要点

Contents

第13計 草むらを打って蛇を驚かせ居場所を確認する計(打草驚蛇計)

野村宏

今回の36計は、13計の「草むらを打って蛇を驚かせ居場所を確認する計」です。

敵がどこにひそんでいるか分からない時「打草驚蛇計」が使われます

野村宏

この計は、敵が謀略の使い手で、なにを仕掛けてくるか自信をもって見分けられないときに使います。

有名な例は、三国時代に、蜀の諸葛亮孔明と相たいし、孔明がどんな作戦でくるか自信がなかった魏の司馬懿仲達が使った戦略です。

魏の討伐軍を率い司馬懿仲達と対峙していた諸葛亮孔明は、本国である蜀が呉軍に攻め込まれたとの知らせを聞きます。これを聴き、諸葛亮孔明は蜀の軍を撤兵し、本国の救済に向かうことを決めます。

いそいで軍を撤退しなければならない時は、その最後尾を守るのは非常に困難です。いわゆる「しんがり」という役回りで、自分が逃げるように撤退していくところに、いきおいに乗って攻めかかる敵を相手にするのですから、被害が大きく非常にむずかしい役回りなのです。

それゆえ相手が撤退を始めたら、それを背後から急襲し、大きな損害を与えるのが戦の定石です。しかし、司馬懿仲達は、それまでさんざん諸葛亮孔明の策略に翻弄され、また何か謀略の網が張られているのではないかと疑心暗鬼になり、総攻撃の命令を下せませんでした。

しかし、部将の張郃は「この機会を逃すのは恥」と強く追撃を進言します。そこで司馬懿仲達が考え、実行したのが、この「草むらを打って蛇を驚かせ、その居場所を確認する計」(打草驚蛇計)でした。

追撃にはやる張郃にわずかな手勢を与え、孔明の策にはまってもやむなし、孔明の策がそれでハッキリすればよし、という思惑で張郃に追撃させたのです。

猪突猛進で進撃した張郃。蜀の防備を打ち破り、快進撃に見えました。しかし、ある峡谷に突入します。その時、爆音が轟き、谷の上から岩や巨木が雨のように降り注ぎます。そして退路をふさがれた張郃の軍勢に矢が雨あられと降り注がれます。張郃軍は全員射殺され全滅しました。

司馬懿仲達は、これで孔明の策を見破ることができました。要は、張郃を捨て駒にして、自分の安全は確保したのです。イノシシ武者の張郃は哀れです。

私が30代の時、転職した先の専務にこの計を使われました

野村宏

私自身の経験談です。私は30代前半の時、海外進出を検討していた外資系スーパーのオーナーに誘われ、転職しました。


最初の仕事は、台湾人資本家と交渉し、台湾で共同でリゾート開発する案件でした。私は、その会社の専務と同行し、台湾中部の台中に向かいました。ところが、そのとき専務が急用ができたから君ひとりで行ってくれ、と言って、ひとりでフィリピンに行くといって出て行ってしまったのです。

しかも、フィリピンの行先はかなりの田舎で、電話連絡もつかない、とおまけのように念押ししていきました。相手の台湾人資本家は、海千山千のつわものです。そこに、入社して最初の仕事に取り掛かる人間をひとりで置いていく、というのは相当に非常識な行動です。

商談の場は修羅場になりました。だいぶ相手方有利の交渉になってしまいました。ただ、私としては、しんどい思いはしましたが、これも経験のひとつにはなっています。

あとから36計を知ってから、この件を思い出すと、これが、草むらをたたいて、蛇を驚かせ、蛇を動かすことで、その所在を見つける計(打草驚蛇計)を使われた、ということなのだと思いました。

要は、この専務は、自分の責任を回避することだけを考えたのです。それで、私を捨て石に使って、相手の出方をみたのです。張郃のように殺されなかったのは幸いです。

この件が、打草驚蛇計を意識して行われたかはわかりませんが、草を打って蛇の所在を確かめるために人を捨て石にする計なので、非情の計と言わなければなりません。

最近世間を騒がせている闇バイトも、これに似た考えです。現在でも、こんな考えを実行する連中がかなりいるということで、注意しなければならないということです。

動物も「打草驚蛇計」を使う?

野村宏

この使い手は誰だと思いますか?
実は、イノシシの母親です。

先日テレビを見ていたら、ワナに自分の子供のウリ坊をかからせて、ワナがどこにあるかを探って、自分はワナを避け逃げた、というんです。

ワナにウリ坊だけが多数かかっていて、その近くに母親が逃げた足あとがあるので、そう考えられるというニュースでした。ちょっと恐ろしいですね。

動物でも母親は子供を守る、という考えがひっくり返される、衝撃的な話しです。現代でも、この打草驚蛇計は、自分だけ助かろうという人間が良く使います。注意してください。


この記事が気に入ったら
いいねしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
Contents