美人計とは何か?中華系の戦略思想から学ぶ

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第31計の美人計(ハニートラップ)に気をつけろ!

野村宏

欧米や中華系のビジネスマンと比べ、日本人ビジネスマンが特に弱いのが「謀略」「策略」です。ありていに言ってしまえば「人のハメ方」のノウハウが大幅に劣っています。これは日本人の良さでもありますが、対応策をしらないとタダ食い物にされるだけです。

特に中国四千年の歴史といいますが、その大きな柱として蓄積されてきた知恵は、この敵をハメる計略「謀略」です。
いわゆる36計というのは、典型的な謀略を36種類集めたもので、中華系の世界では長年のベストセラーです。

日本人は36計のうち一番最後の36番目の計「逃げる」しかまず知りませんが、中華系(華僑も含めて)の経営者は36計を全部を読んでいると思ったほうがいいでしょう。私たちにとって、けっして相手をだますためではなく、相手の考えかたを知り、自分を守るために知っておいたほうがよい知識です。

野村宏

今日は36計の中で、今でも一番よく使われる計略、第31計「美人計」
今でいうハニートラップをご紹介します。

第31計 美人計

野村宏

最近、ハニートラップ、という言葉をよくみかけます。

美人を重要人物に近づけ、男ではまず近づけない近さまで重要人物のフトコロにもぐりこみ、機密情報をとったり、ニセ情報を流したり、敵の陣営をかく乱したりする戦術のことで、中国では2000年以上前からしばしば使われ、主に弱者側が不利な状況をひっくり返す一発逆転の戦術として使われてきました。

三国志ファンならご存じでしょうが、董卓の暴政に悩まされていたものの、武力でまったく歯が立たない後漢の高官王允が、董卓の武将で三国志最強の猛将呂布と董卓の仲を悪くするために、美女貂蝉をまず呂布に近づけ、女に目がない呂布の気を引くことに成功します。そして、次の機会に、貂蝉が董卓の目にとまるよう仕向け、やはり女に目がない董卓のそばに送り込むことに成功します。そして、董卓が貂蝉を無理やり奪い取ったと呂布に思わせるようもっていきます。最後は、頭に血が上った呂布に董卓を討たせることに成功します。武力ではまるっきりダメな王允が、貂蝉という美女を使って政敵を葬り去った成功例として有名な36計の「第31計 美人計」では必ずこれが紹介されます。

野村宏

この計をみなさんは昔の話しとおもわれますか?

そんなことはまったくありません。アジアで仕事をしていると、中国にルーツを持つ方と相対することは非常に多いのですが、彼らの頭の中には、まず36計が知識として蓄えられていると思ったほうが良いです。なにせ、彼らがビジネスで成功するための基本戦略が36計なのですから。

そしてその中で、この美人計はきわめて成功率が高い、ひんぱんに使われる戦術と思って間違いありません。ただ、そのやり方は、董卓をやっつけるために使ったような派手なやり方はめったにありません。あれを典型例だと思っていると間違えます。

野村宏

基本は、情報取りや、ニセ情報流しでしょう。ただ、もっともっと危険なトラップもよく見聞きしました。

私の実体験

野村宏

例えば、契約交渉がうまくいかず「絶対ゆずれない条件がある」と息まいていた知人が、交渉をお開きにした後の夜、相手方と一緒にカラオケに行き、その後相手方のさそいでどこかに消えたことがありました。

私は、カラオケ店の雰囲気があやしいし、いやな予感がしたので止めました。翌日、また交渉を開始したら、その知人は、あれほどのめないと息巻いていた条件をあっさりとのんだんです。

野村宏

昨夜なにかあったとしか思えない変貌です。

知人はなにも答えませんが、一晩でこれほどの効果を発揮する戦術といえば美人計(最近ではハニートラップというほうが普通)にかかったとみるべきでしょう。それも情報取り以上の危険なトラップです。ハニートラップにかかったことをネタにする恫喝です。

具体的なトラップのかけ方は、みなさんのご想像にお任せしますが、董卓の時代と違って記録媒体がいろいろと発達している現在は、恫喝の方法はかぞえきれないぐらい豊富です。海外で厳しい交渉の場にのぞまれる方は、一番に注意すべき計略でしょう。

最近でこそ、政官財界の重要人物の間では、この手の危険なハニートラップに要注意という認識はかなり広まっているようです。しかし、20年以上前は、かなりの要人でもほぼ無防備でした。その結果、悲惨なことになった事例も知っている方は知っています。これにかかると、かかった人がえらくなればなるほどトラップで手に入れた恫喝のネタの利用価値が高まるので、それこそ何十年も利用されることになってしまいます。

数年前の話

野村宏

Facebook で台湾の女性が化粧品販売をしているので友達申請したいと、申し出がありました。

化粧品の販路を外国にも作りたいと考えていた私は、情報をとれたらと思いOKしました。そうしたら、毎日のように送られてくる情報は化粧品の販売とは全然関係ないものでした。

超ミニスカートをはいてメイクを決めた自分の写真をガンガン送ってきて「日本にくる予定があるので会えないか?」などというメッセージが毎日くるのです。

なんか変だなと思いながら数日たって「実は、台湾で30年ほど前に仕事をしたときがあり、乾杯の強制で悩まされた」とメッセージを送りました。

野村宏

すると「台湾にくわしいんですね」とメッセージがきて、それからピタリとメッセージがこなくなりました。

要は、外国人女性からこんなメッセージがきたら天まで舞い上がってしまい「なんでも言うことを聞く奴だ」とみられていたのが「そうでもなさそうだ」ということでターゲットにするのを止めた、という感じでしたね。これもハニートラップの一種でしょう。

最近では「国際ロマンス詐欺」とか言われることもありますが。このようにハニートラップのダマし方は、いろんなやり方があります。美人計(ハニートラップ)は、男ではぜったいできない、美人を使って敵のふところに一気に近づき策を仕掛けること全般を指しますので、いろんな仕掛けを含むんです。

これからも36計は、いろいろとご紹介していきますが、ダマすためではなく、ダマされないために、海外で仕事をされようとする方には特に重要な知識です。

日本人でも使う人がでてくることは十分に考えられますので、覚えておいて損はありません。いやな知識だなどと思わないでください。外国人相手にビジネスするにはぜひ必要な知識なのです。


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