千利休が作り出した「お花炭」から生まれた特別な活性炭を作る技術
活性炭には、あなたが想像する以上の利用価値があります。
活性炭の浄水器、蓄電装置への応用
- 1.活性炭はその毒物などを吸着する力が浄水や解毒に使われます
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活性炭といえば、その膨大な数の微細な穴に、トリハロメタン、アンモニア性窒素、農薬など水の中の有害物質を吸着させ、取り除く、浄水作用が有名です。その他、医薬品として解毒剤・腎不全薬としても使われます。
- 2.化学反応で電気を溜める電池とは異なる活性炭の表面に電気を溜める蓄電装置が発明され利用されています
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あまり知られていない使い方としては、活性炭の表面に蓄電できることを利用した蓄電装置があります。この蓄電装置は電気二重層キャパシタと呼ばれますが、電池が化学反応を利用して電気を溜めるのに対し、物理的に炭の表面に電気を吸着させたり離脱させたりして充放電することを利用しているので、化学反応に伴う劣化がゼロで、数百万回の充放電ができます。
この蓄電装置は、劣化がほぼないのと、一瞬で大電流を流すのに適しているため、電車や自動車がブレーキを掛けるときにできる電力を溜めて、発車の時に必要な大電流を供給するのに使われています。このやり方で、必要電力がほぼ半分にでき、省エネに画期的な技術になっています。この技術は、JRの山手線や中央線など主要路線にすでに使われています。主なハイブリッドカーにも使われているんです。
この技術のカナメが活性炭なんですね。
活性炭の驚くべき表面積とその応用
活性炭1グラムでその表面積がどれぐらいあると思いますか?
活性炭は、グラムあたりの表面積が想像以上に広いんです。1グラムあたり500平米あれば活性炭といわれます。たった1グラムの活性炭で、500平方メートルの表面積があるんですから!500平米というと、だいたいテニスコート2面分です。
たった1グラムですから、これでも結構スゴイんですが、特別な技術を使えば、この5倍、1グラムあたり2,500平方メートルの表面積の活性炭を作ることができます。ということは、この活性炭が1kgあったら、2,500,000平方メートルの表面積になりますね。
ちょっと想像できないぐらいの広さですが、これだけ広いから、たくさんの有害物や電気を吸着でき、高性能の浄水器や蓄電装置を作れるんですね。
千利休とお花炭:美と技術の融合
この超高性能活性炭を作るための技術が、実は千利休によって作られています。
時代の先端を行く蓄電装置のカナメになる技術に、400年以上前の人である千利休が関係するとは、ちょっと想像しにくいです。
千利休は「一期一会」の精神で、たった一回、今この時しか会うことがないかもしれない目の前の客を、どうもてなすかに全精力を注ぐ、という心構えを説かれていたようですが、この心構えから生み出されたのが「お花炭」でした。
お花炭とは、薄い花びらの形を崩さずに、花の形のままで炭にしたものをいいます。簡単そうに思えるかもしれませんが、実際には非常に難しい技術です。薄い花びらを火にくべれば簡単に灰になってしまい、炭としては残りません。
しかし花の形をそのまま残した炭を茶の湯の炉にくべたときの美しさを想像した利休は、なんとしてもその美しさで客をもてなしたいと、お花炭をなんとかして作りたいと切望しました。
利休は、当時の最高の炭職人に、なんとしてもお花炭を作り上げろと厳命しました。職人は長い大変な苦労の末に、花の形をそのまま残した炭を作ることに成功しました。
茶の湯の炉にこのお花炭をくべると、一瞬で明るい光を発して輝く花の形が現れ、客は大満足したと伝えられています。
お花炭の秘密:繊細な炭素のつながりから生まれる高性能材料
花のような植物の内部にある繊細な炭素のつながりだけをそのまま残すお花炭の技術で、わずかな容積の植物から膨大な表面積を持つ活性炭を作ることができます。
植物は炭素のクサリがつながった有機物でできています。その形は非常に複雑で、膨大な総延長を持っています。これを、ほぼそのまま残せるのがお花炭の技術なのです。
他の炭焼き技術では、簡単に灰になってしまう部分が非常に多いのに比べ、多くの炭素のクサリを炭として残すことができるので、グラムあたりの表面積が段違いに増えるというわけです。この段違いの表面積が、段違いの蓄電能力につながるのです。
千利休の美意識、もてなしの心が、こんな技術革新につながるんですね。